代理行為と無権代理の違い――追認・追認拒絶・無権代理人の責任を整理する

無権代理

代理権を持つ者が行った代理行為は本人に効果が帰属しますが、代理権を持たない者が「代理人として」行為をした場合はどうなるのでしょうか。これが無権代理の問題です。

今回は、有権代理と無権代理の区別・無権代理の効果・本人の追認・無権代理人の責任について整理します。


目次

有権代理と無権代理の区別

有権代理

代理権を有する者が、顕名をして、代理権の範囲内で行った法律行為を有権代理といいます。

有権代理の効果は直接本人に帰属します。これが代理制度の正常な姿です。

無権代理

代理権を持たない者が代理人として行った法律行為、または代理権の範囲を超えて行った法律行為を無権代理といいます(民法113条)。

無権代理が生じる典型的な場面は3つです。最初から代理権がない場合、代理権が消滅した後に行為をした場合、そして代理権の範囲を超えて行為をした場合です。


無権代理の効果(民法113条)

規範定立

無権代理人がした法律行為は、本人が追認しない限り、本人に対してその効力を生じません(民法113条1項)。

つまり、無権代理行為は本人に効果が帰属せず、本人も相手方も宙ぶらりんの状態になります。この不安定な状態を解消するのが、本人の追認と相手方の催告・取消権です。

相手方の保護

無権代理の相手方は、契約が有効か無効かわからない不安定な状態に置かれます。そこで民法は相手方を保護するために2つの権利を与えています。

催告権(民法114条)

相手方は本人に対して、相当の期間を定めて追認するかどうかを催告することができます。本人がその期間内に確答しない場合は、追認を拒絶したものとみなされます。

取消権(民法115条)

相手方は、本人が追認する前であれば、無権代理行為を取り消すことができます。ただし、ただし、相手方が無権代理であることについて悪意または有過失の場合は取消しができません。


本人の追認・追認拒絶

追認の効果

本人が追認をすると、無権代理行為は初めから有効な代理行為であったものとして扱われます(民法116条本文)。追認には遡及効があります。

ただし、第三者の権利を害することはできません(民法116条ただし書)。追認前に善意の第三者が権利を取得していた場合、その第三者は保護されます。

追認の方法

追認は明示的に行う必要はなく、黙示の追認も認められます。本人が無権代理行為の存在を知りながら、契約の履行を求めたり、相手方から給付を受けたりした場合、黙示の追認があったとみなされることがあります。

追認拒絶の効果

本人が追認を拒絶した場合、無権代理行為は本人に対して効力を生じないことが確定します。相手方は本人に対して契約上の効果を主張できなくなります。この場合、相手方は無権代理人に対して責任を追及することになります。


無権代理人の責任(民法117条)

規範定立

無権代理人は、本人が追認しない場合、相手方の選択に従い、契約の履行または損害賠償の責任を負います(民法117条1項)。

これは無権代理人が代理権を持つと称して相手方を信頼させた以上、その信頼に応える責任があるという考え方に基づいています。

責任が免除される場合

ただし、次の場合には無権代理人は責任を負いません(民法117条2項)。

①相手方が悪意の場合

相手方が契約時に無権代理であることを知っていた場合、相手方は保護に値しないため、無権代理人は責任を負いません。

②相手方が過失により知らなかった場合

相手方が過失によって無権代理であることを知らなかった場合も、原則として無権代理人は責任を負いません。ただし、無権代理人が自己に代理権がないことを知っていた場合(悪意の無権代理人)は、相手方に過失があっても責任を負います。

③無権代理人が制限行為能力者の場合

無権代理人が制限行為能力者であった場合も責任を負いません。制限行為能力者を保護するためです。

あてはめ

整理すると、無権代理人の責任が認められるのは、相手方が善意かつ無過失であり、無権代理人が行為能力者である場合です。相手方が善意であっても過失がある場合は、原則として責任を負いません(無権代理人が悪意の場合を除く)。


まとめ

無権代理行為は本人に効果が帰属しませんが、本人が追認すれば遡及的に有効となります。追認前に相手方は催告権・取消権を行使できます。

本人が追認を拒絶した場合、無権代理人は善意無過失の相手方に対して履行または損害賠償責任を負います。ただし、相手方が悪意または有過失の場合、および無権代理人が制限行為能力者の場合は責任を負いません。

無権代理の問題は、本人・無権代理人・相手方の三者の利益調整という視点で整理すると、各規定の趣旨が見えやすくなります。


免責事項:本記事は行政書士試験を勉強中の運営者が、学習内容を整理・言語化したものです。法的助言・法律判断・代理行為を行うものではありません。個別の法律問題については、弁護士・司法書士等の専門家にご相談ください。

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