時効の完成猶予と更新――事由・旧法との対比を整理

時効の完成猶予と更新

時効期間が進行している間に一定の事由が生じると、時効の完成が遅れたり(完成猶予)、時効期間がリセットされたり(更新)します。2020年の民法改正でこの分野の用語と制度が整理され、旧法の「中断・停止」から「更新・完成猶予」という体系に変わりました。

今回はこの2つの概念の違い・主な事由・旧法との対比について整理します。

目次

完成猶予と更新の違い

完成猶予とは

完成猶予とは、一定の事由が生じた場合に、その事由が終了するまでの間、時効が完成しないとする制度です。一定の事由がある間、時効の完成を猶予する制度です。

旧法の「時効の停止」に相当します。時効期間のカウント自体は続いており、完成のタイミングが猶予される点が特徴です。

更新とは

更新とは、一定の事由が生じた場合に、それまで進行していた時効期間がリセットされ、その時点から新たに時効期間が進行し始める制度です。

旧法の「時効の中断」に相当します。ゼロからのやり直しという点で、完成猶予より効果が強力です。 —

完成猶予の主な事由

裁判上の請求等(民法147条)

裁判上の請求・支払督促・和解・調停の申立て・破産手続参加等があった場合、その手続が終了するまでの間、時効は完成しません。手続が終了した時から6ヶ月を経過するまでの間も完成しません。

なお、確定判決または確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定した場合は、完成猶予にとどまらず時効の更新も生じます(民法147条2項)。訴訟で勝訴確定した場合などです。

強制執行等(民法148条)

強制執行・担保権の実行・担保権の実行としての競売・財産開示手続等があった場合も完成猶予となります。手続終了時から6ヶ月間は時効が完成しません。

申立ての取下げや手続の取消しがあった場合は完成猶予の効力が生じず、更新も生じません(民法148条2項ただし書)。

仮差押え・仮処分(民法149条)

仮差押えまたは仮処分があった場合、その手続が終了した時から6ヶ月を経過するまでの間、時効は完成しません。仮差押え・仮処分は暫定的な措置であるため、更新効は生じず完成猶予のみです。

催告(民法150条)

催告があったときは、その時から6ヶ月を経過するまでの間、時効は完成しません。ただし、催告によって完成猶予された期間内に再度催告をしても、その再度の催告には完成猶予の効力が生じません。催告の繰り返しによる引き延ばしを防ぐためです。

協議を行う旨の合意(民法151条)

権利についての協議を行う旨の書面による合意があった場合、合意時から最長1年間(合意で定めた協議期間・合意解除時から6ヶ月のいずれか早い時まで)時効は完成しません。当事者が任意に交渉する機会を保障するための制度です。

天災等(民法161条)

時効の完成前6ヶ月以内に天災その他避けることのできない事変があった場合、その障害が消滅した時から3ヶ月を経過するまでの間、時効は完成しません。

更新の主な事由

確定判決等による権利確定(民法147条2項)

裁判上の請求等によって権利が確定した場合(確定判決・裁判上の和解・調停が成立した場合等)、時効は更新され、確定時から新たに時効期間が進行します。なお、確定判決によって確定した権利の時効期間は、判決等によって確定した権利は、原則として10年で時効消滅します(民法169条)。

強制執行等の終了(民法148条2項)

強制執行等が終了した場合(申立ての取下げ・手続の取消しを除く)、時効は更新されます。

承認(民法152条)

時効によって利益を受ける者が、権利の存在を認める行為(承認)をした場合、時効は更新されます。承認の方法は明示・黙示を問いません。一部弁済・支払猶予の申入れ・債務の存在を認める発言などが承認にあたります。

旧法の「中断・停止」との対比(2020年改正)

改正の背景

2020年4月施行の改正民法で、時効に関する用語と制度が大幅に整理されました。旧法の「時効の中断」と「時効の停止」という用語は、直感的にわかりにくいという批判がありました。

対応関係

旧法の「時効の中断」は新法の「時効の更新」に対応します。時効期間がリセットされる点は同じです。

旧法の「時効の停止」は新法の「時効の完成猶予」に対応します。完成が遅れる点は同じです。

実質的な変更点

用語の変更にとどまらず、実質的な変更もあります。旧法でも催告そのものには中断効はなく、6ヶ月以内に裁判上の請求等をすることで中断の効力につながる構造でした。また、協議合意による完成猶予が新設されました。

試験や実務で旧法の知識に触れる機会もあるため、新旧の対応関係を押さえておくことが重要です。

まとめ

完成猶予は時効の完成タイミングを遅らせる制度、更新は時効期間をリセットする制度です。旧法の停止・中断に対応します。

完成猶予の主な事由には、裁判上の請求・強制執行・仮差押え・催告・協議合意・天災等があります。更新の主な事由は、確定判決等による権利確定・強制執行等の終了・承認です。

2020年改正で用語が整理されたことで、制度の趣旨がより明確になりました。「完成を猶予する」か「期間をリセットする」かという機能の違いを軸に整理しておくと、各事由の位置づけが把握しやすくなります。

免責事項:本記事は行政書士試験を勉強中の運営者が、学習内容を整理・言語化したものです。法的助言・法律判断・代理行為を行うものではありません。個別の法律問題については、弁護士・司法書士等の専門家にご相談ください。

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