民法を勉強していると、「動産」と「不動産」という区別が至るところに出てきます。単なる言葉の違いではなく、所有権の移転方法・対抗要件・物が合体したときの処理など、法律上の扱いが大きく異なります。
今回は、動産と不動産の定義と区別・それぞれの対抗要件・付合・混和・加工(添付)について整理します。
不動産と動産の定義
不動産(民法86条1項)
土地およびその定着物を不動産といいます。定着物とは、継続的に土地に固定されているものをいいます。建物・石垣・樹木などが該当します。なお、立木法による登記をした立木は、独立した不動産として扱われます。
注意が必要なのは、建物は土地とは別個の不動産として扱われる点です。日本法では土地と建物は独立した不動産であり、それぞれ別々に登記され、別々に売買することができます。
動産(民法86条2項)
不動産以外の物をすべて動産といいます。自動車・机・現金・貴金属など、移動できる有体物が動産です。
ただし、自動車・船舶・航空機などは動産でありながら登録制度が設けられており、対抗要件の面で通常の動産とは異なる扱いを受けます。
不動産の対抗要件――登記
規範定立
不動産の物権変動(所有権の移転・抵当権の設定など)は、登記をしなければ第三者に対抗することができません(民法177条)。
対抗とは、自分の権利を相手に主張できるということです。登記がなければ、たとえ契約が有効に成立していても、第三者に対して「私がこの土地の所有者だ」と主張できません。
あてはめ
たとえば、AがBに土地を売り、その後同じ土地をCにも売ったとします(二重譲渡)。この場合、先に登記を備えた方が土地の所有権を第三者に対抗できます。売買契約の先後ではなく、登記の先後で決まります。
ここでいう第三者とは、当事者およびその包括承継人以外の者で、登記の欠缺(欠けていること)を主張する正当な利益を有する者をいいます。背信的悪意者(不正な目的で登記を先に取得した者)は第三者にあたらないとするのが判例の立場です。
(参照:最判昭和43年8月2日・民集22巻8号1571頁)
結論
不動産の物権変動を第三者に対抗するには登記が必要であり、二重譲渡の場面では登記を先に備えた者が勝ちます。ただし背信的悪意者は保護されません。
動産の対抗要件――引渡し
規範定立
動産の物権変動は、引渡しをしなければ第三者に対抗することができません(民法178条)。不動産における登記に相当するのが、動産における引渡しです。
引渡しの4類型
引渡しには、次の4つの形態があります。
現実の引渡し
物を物理的に相手方に渡すことです。最も基本的な引渡しの形態です。
簡易の引渡し(民法182条2項)
譲受人がすでに物を占有している場合に、当事者の意思表示だけで引渡しが完了する方法です。
占有改定(民法183条)
譲渡人が物を引き続き占有しつつ、以後は譲受人のために占有する意思表示をすることで引渡しとする方法です。物が実際には動かないため、外部からは権利変動が見えにくいという特徴があります。
指図による占有移転(民法184条)
第三者が物を占有している場合に、譲渡人がその第三者に対して「以後は譲受人のために占有せよ」と指図することで引渡しとする方法です。
結論
動産の物権変動の対抗要件は引渡しです。引渡しには4つの形態があり、占有改定のように外形上変化が見えにくいものもあります。
添付――付合・混和・加工
異なる人が所有する物が合体したり、他人の材料に加工したりした場合、所有権はどうなるのかという問題が「添付」です。付合・混和・加工の3つに分かれます。
付合(民法242条・243条)
不動産への付合
他人の所有する動産が不動産に付合して分離が不可能になった場合、その動産は不動産の所有者に帰属します(民法242条)。
たとえば、他人の土地にブロック塀を設置し、土地と一体化して分離できなくなった場合、そのブロック塀は原則として土地所有者に帰属します。
ただし、権原(正当な権利)によって付合させた者は、この限りでありません。賃借人が適法に建物を建築した場合などがこれにあたります。
動産同士の付合
所有者が異なる動産が付合して分離が著しく困難になった場合、各動産の価格の割合に応じた持分による共有となります(民法243条)。主従の区別がある場合は、主たる動産の所有者が所有権を取得します。
混和(民法245条)
所有者が異なる物(液体・穀物など)が混ざり合い、識別できなくなった場合、付合の規定が準用されます。それぞれの価格の割合に応じた持分による共有となるのが原則です。
加工(民法246条)
他人の材料を用いて新たな物を作った場合、原則として材料の所有者がその物の所有権を取得します。ただし、加工によって生じた価格が材料の価格を著しく超えるときは、加工者がその物の所有権を取得します。
たとえば、他人の木材を使って高価な彫刻を作った場合、完成品の価値が材料の価値をはるかに超えるため、加工によって生じた価格が材料価格を著しく超える場合には、加工者が所有権を取得するとされています。
償金請求
付合・混和・加工によって所有権を失った者は、所有権を取得した者に対して、不当利得として償金を請求することができます(民法248条)。物の所有権は失いますが、経済的な補填は受けられます。
まとめ
今日整理した内容をまとめます。
不動産は土地とその定着物、動産はそれ以外の物です。建物は土地とは別個の不動産として扱われます。不動産の物権変動の対抗要件は登記、動産は引渡しです。引渡しには現実の引渡し・簡易の引渡し・占有改定・指図による占有移転の4形態があります。
添付については、付合・混和・加工のいずれの場合も、所有権の帰属が変わる代わりに、失った側には償金請求権が与えられるという構造になっています。
動産と不動産の区別は、物権法全体の基礎となる分類です。対抗要件の違いを軸に各制度を整理しておくと、後の担保物権や物権変動の学習がスムーズになると感じています。
免責事項:本記事は行政書士試験を勉強中の運営者が、学習内容を整理・言語化したものです。法的助言・法律判断・代理行為を行うものではありません。個別の法律問題については、弁護士・司法書士等の専門家にご相談ください。
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